1週間で辞めるつもりだったバイト
東京での学生時代、家賃の支払いが滞ってしまい、やむを得ず日払いのバイトを始めました。
当初は、1週間分のバイト料を貯めれば、家賃を払うことができるので、1週間で辞めるつもりでした。
仕事の内容は、手づくり味噌の訪問販売でした。
1チーム5人が1台のワゴン車に乗って、都内や埼玉県の指定されたエリアに行き、その範囲内の町内の家を歩いてまわり、一軒一軒を訪問して、味噌を試食してもらったうえ、買ってもらうというものでした。
2つの心のせめぎ合い
最初は、何件訪ねても買ってもらえなくて、挫けそうになりました。
次の家を訪ねても買ってもらえないのではないか、というネガティブな気持ちがもたげたときは、マインドの巻き返しに苦労しました。
チームの仲間もなかなか売れませんでした。
仲間のほとんどが学生で、なかにはフリーターや、正職員として別の仕事を持っている人もいました。
訪問販売というのは孤独な面もありますが、散っては集まって、チーム内で声をかけ合うことで折れかけた気持ちを立て直すことができました。
まさに、ネガティブな心とポジティブな心とのせめぎ合いを繰り返したバイトでした。
それでも、バイト仲間はほとんど若かったし、学生や学生風だったので、玄関に出てくれた主婦の中には、私たちに好感をもって接してくれる人たちもいました。
そこで話が弾んで味噌が売れ、それから続けて売れたこともありました。
十人十色。いろいろな個性のバイト仲間たち
チームは日によって編成が変わるのですが、何日も顔を合わせて同じ苦労をしているうち、だんだんとチームの仲間と心が通い合うようになりました。
いろいろなタイプのメンバーがいました。ミュージシャン志望のO君、実家が教会のH君、大学工学部のチャラ男君、「大学やめたい」が口癖のB君、天涯孤独のK君、自称「大学教員」で年配のSさん、ほのかに色っぽい女子美大生Uさん、そしてスレンダーな専門学校の女学生Mさん。
バイトが終わった後、みんなで一緒に居酒屋に行くこともありました。
バイト最終日と決めていた日、工学部のチャラ男君が「今日は売れないし、サボろうぜ」と言い出しました。
その日は訪ねても訪ねても売れなく、散々でした。あとで考えると、チャラ男君は「くよくよしても仕方ない。切り替えて行こう」という気持ちで、そう言ったのかもしれません。
それで売上を上げられないままで事業所に帰り、そこで所長から厳しく叱咤されました。
この所長は酒グセはよくないのですが、情の熱い人でした。
私は、所長の叱責に「悔しい」と思いました。
そこで、私は咄嗟に「明日からも来ます」と言いました。
さらに3ヶ月延長したバイト
それから3ヶ月、私はバイトを続けました。
その間、なかなか売れない日もありましたが、バイトをするのが楽しくなりました。
訪問先の人たちとの触れ合い、バイト仲間との交流。仲間同士で身のうえ話をするうちに気持ちがどんどんうちとけて来ました。
ミュージシャン志望のO君はジョン・レノンへの熱い思いを語ってくれ、スレンダーな女学生Mさんは僕が落ち込んでいると歌をうたって励ましてくれました。
彼女とは、そのあとに付き合うことになりました。
このバイトを通して得たことは2つあります。
1つは汗を流して働くということの尊さです。
3ヶ月の間、つらいこともありましたが、それを喜びに変える何かがありました。
もう1つは、人との出会いです。
大学の友だちとは違った仲間と出会えたことによって、私の視野が少し広がったのだと思いました。
できることなら、もう一度、バイト仲間だった彼らや彼女らに会いたいと思っています。
現在の日常生活に満足していますか?
アルバイトは新たな自分を発見できる場です。
ツラいこと・大変なこともありますが、その経験こそがあなたの糧となります。
そして、一生付き合える友人や人生のパートナーにも出会えます。
あなたの明るい未来に向けて、新たな一歩を踏み出して見ませんか?
